日比谷図書文化館、4階にある特別研究室「内田嘉吉文庫」で私も修復を担当した本が
報告とともに展示されています。
今回担当した1冊、『父』は内田嘉吉氏のご子息、内田誠氏の著書でとても凝った特装本です。表紙は荒めのクロスに赤い漆研出塗り、本文紙も背表紙にあるイニシャルの花文字が漉き込まれた特漉きの局紙に印刷されています。何枚もの口絵や版画が本文に貼り込まれていたのが外れた折丁があり、表紙のみぞ部分も裂けていました。染めた和紙でみぞの裏側と表側から補修し、本文もかがり直しました。
破れていたみぞ部分
内田文庫の本は嬉しいことに、手に取ってみることが出来ます。ただ、それだけ活用されるということで、修復した本でも手当が必要になる場合もあります。補修の和紙が破れたとの連絡をいただき、再度和紙を貼り戻しました。また、漆塗りの平滑面に和紙がなじみにくいので、箱の出し入れの際に補修部分が引っかからないように、中性紙で保護ジャケットを作りました。これで表紙が擦れて傷むのを少し防げると思います。背部分にイニシャルを含む画像をデザインして、本棚に飾った場合にも違和感なくおさまるようにしました。他の本の補修でも細々できるだけ工夫しています。どうぞ研究室の展示でご覧ください。
100年後も手に取れる本に〜内田嘉吉文庫修復報告2019〜
2019年7月16日(火)−9月30日(月)
2018年度、日比谷図書文化館特別研究室では内田嘉吉文庫所蔵資料計16点の修復を行いました。そこで、修復報告の一環として、修復を終えた資料とその作業記録を公開します。
今回は大型の洋書や和本、絵図など、修復した資料のジャンルがこれまで以上に多岐にわたっています。活用しながら保存するためにどのような修復が必要か、実物と修復作業の記録パネルでご覧ください。
日比谷図書文化館
4階 特別研究室