2015年12月19日土曜日

記録など


今年も残すところわずかとなりました。
昨年より私も作業していた修復の記録報告が発行されました。
交差式製本で綴じ直した一点です。



千代田Web図書館の「コレクション」に収録されました。
修復後の本も特別研究室でご覧いただけます。
100年後も手に取れる本に ~内田嘉吉文庫修復報告~」展示解説パンフレット
著者 日比谷図書文化館特別研究室
出版社 日比谷図書文化館
発行日 2015.06  図書タイプ PDF

内田嘉吉文庫をはじめ、旧一橋図書館本、明治期以前の和本など約20000冊の図書を活用した、展示やセミナーなどの活動がまとめられた特別研究室サイトページからもダウンロードできます。



2015年12月1日火曜日

プリーツとじの手帳2016



もう12月、そろそろ来年の手帳をつくることにしました。
今年はプリーツの谷に綴じた手帳でしたが、新作は山に綴じて三方金の本文に色をあわせています。どちらも背に空間を作るので開きはよくなります。表紙と見返し紙の淡い水色のペーストペーパーは、ルリユール作品に使うため、いくつか試作した中の一点です。
七つ星に白い星をともしました。



2015年11月12日木曜日

1950年ごろのアルバム


背表紙が外れてしまった母のアルバムを修理、製本しました。



経年劣化で表紙クロスがヒンジ部分で切れています。
汚れも目立つのできれいな部分を使用して、表紙は改装することに。
アルバム部分はにかわ糊で接着されているので、破れている部分のみ黒い和紙で継いで補修をします。
見返しも新たなものに替えたので、貼り見返しにできるように一番最初のページに黒いキャンソン紙を加えています。本文はもっと厚手の黒い洋紙です。


新たに中性紙で表紙芯を作り、水牛革を貼ります。元のクロスをはめ込むための穴を開けて、そこに埋め込み、少しふくらみをもたせるために中には中性紙の厚紙と片面ダンボールを入れました。(たっぷりプレスをしたのでふっくら感はなくなってしまったのですが・・・)


アトリエの片隅にとっておいた懐かしい古裂でケースも作りました。
母へのプレゼントです。

2015年10月19日月曜日

交差式製本


差式製本のワークショップの試作です。
今回は16世紀風製本と同じ本文紙を使って綴じます。
交差式製本は、1990年代イタリアの製本・修復家カルメンチョ・アレギ氏により、本の保存を考慮して創案された製本方法です。表紙の一部をかがりの支持体とし、もう一方の表紙をくみあわせてつくります。表紙素材の組み合わせでいろいろなデザインを楽しめます。

2015年10月11日日曜日

本の修復工房 レフィコリブロ


いよいよ明日から「お直し市場」にデビューします。
会期中は修復・製本に使う道具類の展示と本の修理のデモンストレーションを随時行います。
メニューは担当によって、また日によって変わりますが、
「背表紙が欠けた本の修理」「仮綴じ本の修理」「本文の補修」「糸綴じ」「楽譜のお直し」
漢和辞典の解体」等々 行われる予定です。
修復や製本の過程のほんの一部ではありますが、多くの皆様にみていただくことによって、本を慈しむこの仕事を知っていただければ幸いです。
みなさまのお越しを会場でお待ちしております。

2015年10月6日火曜日

16世紀風製本


ワークショップでの16世紀風製本のノートの試作です。
16世紀、出版部数が増えたヨーロッパではハードカバーではなく、パーチメント(皮紙)による表紙のソフトカバー(リンプ製本)も数多く作られました。支持体である革や麻紐にかがった本文に厚めの素材で表紙をくるみ、紐などをつけて表紙を閉じておけるようにします。
写真は中厚の洋紙とリボンで、小口に折り返しもある仕様です。

2015年9月8日火曜日

ちいさなナグハマディ





手のひらに収まるサイズの中綴じのケースを作りました。
ナグハマディ写本のモデル制作を思い出しながら、革ひもで綴じるタケットとじになっています。
針が落ちないように横長のページ構成にしたワークショップなどの携帯用です。

2015年9月4日金曜日

本の修復工房



無印良品 有楽町 Open MUJI Tokyo 「お直し市場」に『本の修復工房』を開きます。
10月12日(月)-10月18日(日)まで1週間の期間限定工房です。
工房のオープン時間は毎日、12:00-15:30、16:30-20:00(日曜は19:00まで)

今日からリニューアルした無印良品で「お直し市場」も始まっています。
『本の修復工房』の詳細は後日アップいたします!








2015年8月31日月曜日

アルドの遺伝子展



アルドの遺伝子展では、昨年出版された雪嶋宏一著『アルド・アルド・マヌーツィオとルネサンス文芸復興』(東京製本倶楽部刊)をテキストとしたルリユール作品も展示されます。
私も新作を出品いたします。秋の一日、ぜひご覧ください。


アルドの遺伝子
学術出版の祖アルド・マヌーツィオ500年忌
15世紀の書物から現代ルリユールまで
2015年10月5日(月)-2015年11月19日(木)
10:00-18:00 日曜日および11月6日(金)閉室 ただし、10月18日(日)は開室(10:00-17:00)
会場 早稲田大学総合学術情報センター2階展示室
主催 早稲田大学図書館・東京製本倶楽部
早稲田大学図書館
169-8050 新宿区西早稲田1-6-1(早稲田キャンパス18号館)
東京製本倶楽部 http://bookbinding.jp  

今年2015年はルネサンス時代にヴェネツィアで活躍した印刷出版業者アルド・マヌーツィオが亡くなってちょうど500年になります。
「ルネサンス」とは古代ギリシア・ローマの文芸の復興・再生です。アルド・マヌーツィオはまさにそれを印刷術の面から成し遂げた一人に数えられます。
また、様々な工夫を施して書物を中世から近代の姿に改良した人物として知られています。
本展覧会は、アルド・マヌーツィオを彼とその後継者たちの仕事と、彼の遺伝子を受け継いで出版された様々な資料によって振り返り、アルドの500年忌を記念するものです。(HPより抜粋)

2015年8月25日火曜日

秋からの講座

秋から始まる製本講座のご案内です。



ルリユールの時間  「パピヨンかがりの本」
20151024-2016326日(第4土曜日1700-1945
パピヨンかがりでハードカバーの本とノートをつくります。
お気に入りの本をお好きな布や模様紙を使ってオリジナルな一冊に仕上げましょう。
改装したいお気に入りの本を一冊お持ちください。(四六判単行本など、できれば糸かがりの本)

お申込み・お問い合わせ先
NHK文化センター京都教室
京都市下京区四条通柳馬場西入立売中之町99
四条SETビル3F
http://www.nhk-cul.co.jp/school/kyoto/



2015年7月30日木曜日

植物図鑑の修復


背表紙が外れてしまった図鑑を修復しました。
背にはとても素敵な金箔押しの模様が入っています。
よーく見ると右隅に「ひすゐ」サイン。
この表紙デザインは杉浦非水です!これはぜひ保存したいです。しかし、残念ながら革が劣化していてこのまま表紙に戻しても本の開閉に耐えられそうにありません。
そこで背表紙の革は新たな山羊革に付け替えて、元の表紙は別途保存することにしました。


この本はのどに若草色と生成りのクロスが貼り合わさるように膠で接着してありました。その部分が外れて固く変色していたため、和紙と正麩糊で補修して表紙の革と同じのど革に替えました。
一折目と最後の折り丁も外れていたので、本体に細い糸で綴じつけます。


 背表紙の裏側の紙をそっと剥し、革表紙にはクルーセル溶液を塗り、背革のパーツを慎重に和紙で固定して、版画を額装するように、中性紙マットに窓を開けて表紙装飾を見られるようにします。


本と背表紙を保存するフォルダを一緒にしまえるよう、シェルケースも作りました。
約85年、大切にされてきた本を次世代に伝える一助となれば嬉しいです。




『日本植物図鑑』
理学博士 牧野富太郎著
昭和5年8月15日9刷(1930年) (株)北隆社
装幀 杉浦非水

『日本植物図鑑』は現在も版を重ねている図鑑の先駆けで、 
高知県立牧野植物園のウェブサイト では1940年刊のデジタル版が公開されています。

また、植物園には牧野富太郎記念館もあり、博士の愛蔵書や直筆原稿、植物画などからなる「牧野文庫」があるそうです。ぜひ一度行ってみたい場所の一つです。

この本の修復記録の公開をご快諾くださったご依頼主に感謝申し上げます。

2015年5月30日土曜日

夏のワークショップ

今年もうらわ美術館で本のワークショップをします!



711日(土)本の箱をつくる 13001600

大切な本を保護するために箱をあつらえるのもお勧めです。文庫本やはがきなどが入る大きさの本の箱を作ってみましょう。シェルケース、夫婦箱と呼ばれる二つの箱が組み合わさった形で、表紙にはクロスを貼って仕上げます。
材料費1600



712日(日)和の綴じ 写真やはがきを綴じる13001600

旅や展覧会などで集めた、まとめておきたい写真やはがきを和本の技法を使って綴じてみます。写真やはがきのサイズが多少違っていても、糸で綴じることで見やすく保存できます。おしゃれな友禅和紙の表紙で仕立てましょう。
材料費1000
各自、写真やはがきなど綴じる素材をご持参ください。
最大の大きさは縦長B5サイズ(182×257mm)、横長B6サイズ(182×128mm)以下まで20枚以内

会場 うらわ美術館ギャラリーD


申込方法:6月26日必着。一人一講座単位で参加希望日、ワークショップ名、氏名、連絡先(住所・電話)を明記の上、往復はがきまたはメールでお申し込みください。定員を超えた場合は抽選とし、結果は7月3日までにお知らせします。

お申込みお問い合わせ先 うらわ美術館

さいたま市浦和区仲町2-5-1 浦和センチュリーシティ3F
TEL 048-827-3215 FAX 048-834-4327
wakimoto@uam.urawa.saitama.jp

2015年5月27日水曜日

旅を終えて



DBの「シャイクスピア」展で各国を旅してきた作品がロンドンから帰ってきました。

そして、エストニアからも作品が帰ってきました。
エストニアのたくさんの切手も一緒です。



2015年4月14日火曜日

簡単なブックサポート

重たい本や大きな本を扱う時にブックサポートがあると安心して本を開くことができます。
撮影時に使うことも多く、手軽に作れる方法はないかと作ってみました。
牛乳パックを裏返しただけですが、5分でできちゃいます!


牛乳パックをきれいに洗ってよく乾燥させます。
1番が外側に来るように順に折り返し4番と重ね、
蓋部分を内側に折り返します。
底側は折りにくいので切り取っていますが
折り返せればいいので形状は自由です。


蓋部分を内側に折りたたむと固定できます。
蓋の端をまだ切りそろえていない写真です。


正三角形のサポートができます!
これだけでも動きませんが、1と蓋部分の内側に
両面テープをつけて固定するとより安定します。
内側に折った白紙を入れると印刷面も隠れますし
外側を紙や布でくるんでもいいでしょう。


B4サイズのカタログをサポートしてみます。
500mlサイズや、もっと小さな容量のものでしたら
小型の本にも使えると思います。
サポートの上にネルや人工スウェードなどを載せれば
本へのあたりも和らぎ動きにくくなります。


2015年4月7日火曜日

講演会

サン・ジョルディの日に大切にされてきた本たちをめぐるお話をすることになりました。

内田嘉吉文庫 蔵書に見る古書の形と歴史―修復と製本の現場から
4231900-2030
講師:藤井敬子、近藤理恵
日比谷図書文化館 4階 スタジオプラス(小ホール)
千代田区立日比谷図書文化館
千代田区日比谷公園1番4号
http://hibiyal.jp




修復報告の展示もはじまります。
使用した素材や見本もありますのでどうぞご覧ください。

特別研究室企画展示「100年後も手に取れる本に ~内田嘉吉文庫修復報告~」
2015年4月14日(火) 10:00 ~6月14日(日) 16:00
日比谷図書文化館 4階 特別研究室



2015年3月14日土曜日

手帳その後


一年使った手帳は角がまあるくなって擦り傷だらけ・・・
でも、染めた色はあまり変わっていないので、少し安心。



ようやく今年の手帳を仕立てました。
仔牛革にペーストペーパー、プリーツヒンジつきの中綴じです。

2015年2月27日金曜日

春からの講座


4月から始まる講座のお知らせです。
6か月単位で、製本が初めての方も継続して受講の方も愉しんでいただけるよう、少しずつメニューを変えています。写真は未綴じ本ではなく、左は『注文の多い料理店』の文庫本を改装し、色のある紙のモザイクで装飾をした本です。

ルリユール入門 お気に入りをとじる 「本と箱」
2015425日(土)~926日 第4土曜日 17:00-19:45

今期は、未綴じの折丁から本を作り、仕上げた本あるいはお気に入りの本を美しく保存するためのシェル型ケースも作ります。

NHK文化センター京都教室
京都市下京区四条通柳馬場西入立売中之町99 
四条SETビル3F

2015年2月19日木曜日

エストニア国際製本展 Scripta manent V

Scripta manentV
"Names,Words,Witch's Simbols"

2015212-5月13日
2月12日CONFERENCE 10001500
Main hall of the National Library of Estonia, Tõnismägi 2, Tallinn.
OPENING OF THE EXHIBITION 1700
the Estonian Museum Of Applied Art And Design (Lai Street 17,Tallinn, Estonia)
主催:Estonian Association of Designer Bookbinders and National Library of Estonia.

5年に一度エストニアの首都タリンで開かれる国際製本コンクール。
今回は4か国語に訳されたエストニアの若い詩人の詩集がテキストです。
一折が一人の詩集になっているので、それらの中から印象に残った詩のイメージを版画や染めた和紙で表現した一葉を加えています。
私の作品はpremium賞を受賞しました。